有名校の監督の応援は一見ただ熱いように見えて、凝ったものが多い。

青森山田の板垣監督のテノール系の声、鶴岡東の監督のいかにもな雰囲気、遊学館の監督のイカツイが熱視線を送りながらの力強いガッツポーズ。

どれも選手を鼓舞し、監督も自分を熱くさせながら試合を一体となり作っていくもの。
団体戦で一番の見どころはそうしたベンチワークを含むチームとしての演出だと個人的には思うし、それに応える選手は正直二の次でいいかなとさえ思う。

私の母校の顧問も非常に熱い方で、いいプレーをすればポーズを決めて大きな声で煽ってくれたもの。
高校生だった当時、団体で全国選抜に出た高校のエースと試合してストレート勝ちした際も、ほぼほぼ先生の煽りがあってこそ。
「これは、ワールドだ」と、勝った当時の独特な雰囲気に名前を付けてもらったものだが、その時の雰囲気はまさしくチーム全体で作ったもの。
私の方が強くて勝ったというより、雰囲気が明らかに私が勝つ感じだったから勝った、となんとも頭の悪い理由付けではあるがそうした試合が見られるのも団体戦ならではなのではないか。


そうした雰囲気づくりの中心は多くはベンチでメインで応援している人であるか、試合をしている選手である。

一人でもベンチで盛り上げてくれる人がいれば心強いし、盛り上げ上手な人が監督で的確なアドバイスをくれれば尚更心強い。

それに選手も乗っかって共にムードを上げ合えば、監督と選手の二人が揃えば常にイケイケで試合ができるというもの。


かくいう私も今夏の大会ではどういった盛り上げ方、どういった演出をするかただひたすらに考えているわけで、選手に応じてどういったネタが有効か決めあぐねている。

アドバイスOKになった現状のルールでは、ボールを拾っている間、言い換えれば選手がコートについていなければ相手に対しての誹謗中傷以外大体何をいってもいいわけで、正直バリエーションが広い。


アドバイスを出しまくって、かつ味方選手に対して暴言を言い続けた方がいい試合をできる選手もいれば、優しく言った方がいい選手もいるし、なんなら「構え!」とか「ソニック」とか傍から見れば何それ?と思われることを言った方がパフォーマンスが上がる選手もいる。

明らかに構えが高くてミスをしているから「構え」と言う度にハッと気づいて腰を落として変なポーズで待ち、その構えからは想像だにしない質の高いボールを出され相手が気持ち悪いと思い、なんなら試合中泣き始めるといった珍事も経験したが、正直ルール上何も悪いことはしていないし、なんならバッドマナーにも当たらない。
「集中して打つよ」
と同じくらい応援だとは思うのだがな。


なんなら「自分が格下だと思っていた相手に秘められた、これまで経験してこなかった知らない世界を見せられてカルチャーショックを受けた」ことで泣き始めた相手選手の方が相手をバカにしているというか、なんとなくバッドマナーでは、と思うがこれまでキレイな世界しか見てこなかったお嬢様方には確かに厳しいかもしれない。


少なからず応援における言葉のバリエーションが増えたことで、いつも以上にリラックスして試合をさせてあげることが可能になった。


実戦的な言葉の使用が認められたこともあり、アドバイスをする上で考えなければいけないことも増えた。
まず挙げられるのは、端的なアドバイスを選手個人個人に対してのオーダーメイドにすることである。
少なからず選手同士の実力が拮抗し、頭の働くベンチがお互いにいた場合、ベンチの操縦力が試されるような試合も今後多くみられるようになるだろう。そうした時に短い時間で刺さる言葉を言い続けて操縦できれば、優位性は間違いなく取れる。

といっても選手個人で考えながらできれば一番いいのかもしれないけれど、なかなかうまくできない選手もいる。
そうした選手に対し、適切な状況判断や試合の外から見た情報を元に、中では見えない情報を上手く伝える必要があるし、その際に何を言えば聞き理解してくれるのかを考える必要性がある。
またそのためにはこれまで以上に選手のプレイスタイルを十分に理解した上でどういった作戦パターンがあり、どれを使って上手くいっているのかどうかの判断、そして判断の是非が間違っている際どう指示していくのか、等またこんがらがるようなことを求められるだろう。


流石に作戦パターンが合っているのかどうかの判断が外から見たのと内から見たのとでどちらかが絶対に正しいということは無い。

外から見ていて、上手くいっているようでもたまたまの連続で、なんなら心境としてはギリギリ保てている状況で選手としてはもう辛すぎるなんてのも往々にしてあるだろうし、守備的な粘りの意味があるパターンや、運動量が求められるパターンが有効か否かはいくらアドバイザーが優秀であっても選手に自分の判断が正しいと説き伏せるのは難しいだろう。
それこそ強い信頼関係なり主従関係が結べているならば可能なのだろうけれど。

実際同じくらいの相手と当たって勝つ為にはそうした苦しい試合を強いられた際、楽な展開をしている選手の方が勝ちやすいはず。そりゃ無理をしている方が先に潰れやすいだろうし。

外から見ても内から見ても心境的に楽で、同格に勝ちやすい方法は何か?
考え方は色々あるだろうが、まずはカウンター系の攻めが挙げられるのではないだろうか。
催促の質、カウンターの安定性が同格相手と比べて明らかに高いものであるならば試合は相当に優位に進められるはず。(そもそもその状況を同格と言えるのかという疑問はさておき)

例えば
「お互いにドライブで先にかけてジリ貧ブロック展開を強いて、先に三球目を打てるサーブ側の方が点数が取れるシーソーゲーム」
なんて県大会いけそうな人レベルでありがちな試合内容かとは思うが、そこで「先に意図的に打たせ、コースを限定し次のボールをカウンターで狙う」なんてギミックがあれば受けつつもアドは取りやすいはず。

少なからずこの論理でここ一か月間くらい男女問わずひたすらカウンターを教え続けてみたのだが、想定通りになれば安定して打てる選手は割と出てきた。

ただ、実際試合となるとできませんと言われることもしばしば。

試合では想定外は全て諦めろというつもりではあるが、そうした期待値的な発想の試合展開、言い方を変えればギャンブル展開を試合中に勇気を持ってやれ、と練習中に言ってみてもなかなか芯を伴わない。

試合中に言って実際にやって上手くいく経験が無いと多分できないことなのだろう。


さて、ここまでが全て言いたいことの前置きなのだが、私の今大会での目標は

「練習を詰んできたカウンター展開を絶対に試合でやらせて自信を付けさせること」である。

自分から「相手が攻めてるように見えてそれは自分が攻めさせたもので、読み筋に入ったことを確認してから攻める。というかそもそもずっと自分が攻めてるんですけどね!」としたオシャレな攻めを完遂させ、実際にそれが入ることを実感させたい。

少なからず打たせるというのは勇気がいる。
故に心を強くさせるような雰囲気づくり、そしてベンチワークが大事だろう。

その雰囲気づくりのバリエーションを持たせたい、というのが私の考えるところ。
一人でベンチに入った時の雰囲気とか、複数人の時の雰囲気、または団体戦での雰囲気など状況に応じて雰囲気は簡単に変わる。

その状況毎に常にベストの雰囲気を作って選手を鼓舞したいというのは親心か。

煽りすぎると舞い上がったり、逆に冷静になったりとひとそれぞれあるし、個人個人の性格に合わせたものであればなおいい。

仲良い選手に対しては簡単にできる、だが、そこまで信頼関係が気付けていないとやはり難しそう。。


こう見るとお互いにそこまでよく知らないなら、遊学館の監督とか鶴岡東の監督とかのようなかっこいい感じはしても意味がないし、勇気づけられないだろう。

この意味ではやはり有名校の監督は時間をみっちり卓球に、選手にかけてる分選手からの信頼は厚いし、ベンチ力もそれに応じて強い。

有名校の強さは監督の強さに比例するといっていいのではないか。

だからこその貫禄なのか、、

メタボ体系だから貫禄があるのではない、信頼を背中に背負っているからこその貫禄なのだと。

なんならメタボ体系でなくとも、巨人の原監督なんかも貫禄が漂っていたし。


もうあっちこっちいって収集つきませんね
ここまで書いてあれですけど、結局おっさんは凄い、おっさんかっこいいですな。

貫禄なんて私には程遠いものだが、やっぱり将来はかっこいいおっさんになりたいですね。
・・・できたらメタボでない、標準体重以下の貫禄ある感じのおっさんに。